今年も猛暑にうんざりの夏。涼しいところにフォトトリップに行きたいということで、群馬県西部を大きく流れる烏川を、源流の里・倉渕まで遡ってみました。「鶴舞う形の群馬県」の右の翼の付け根のあたり、榛名山麓の西に位置し、長野県軽井沢町とも接する山あいのエリア。きれいな水と昼夜の気温差が育むおいしい農産物が評判です。
実は、筆者が生まれ育った場所でして、30年前の子どもの頃なら夏はエアコンいらずで過ごせた土地でした。2024年の今も涼しく過ごせるのか?期待と不安を胸に高崎市街地から車を走らせ45分で高崎市倉渕町へ到着。まずは道の駅でひとやすみします。
道の駅 くらぶち小栗の里
高崎市倉渕町三ノ倉296-1
営業時間:ふるさと市場 9:00-18:00 食堂11:00-14:00
休憩コーナーとトイレは24時間利用可能
この日の高崎市街地は最高気温39度予想の猛暑日。そこから標高が300m以上高い倉渕ですが、やはり暑かった…。おそらく35度くらいはあったと思うので、普通なら屋外で長時間過ごすのはなかなか難しそう。それでも、源流の里ならではの涼しい水辺を期待して、道の駅で情報収集することにしました。
壁には一面に名所が記された大きなくらぶちマップ、その前では木彫りのユニークな動物たちが出迎えてくれます。土地のほとんどが山林で、林業も倉渕町の大切な産業のひとつ。きれいな川を守ってくれる存在でもあります。
一級河川・烏川は、倉渕町の西の端にそびえる標高1655mの鼻曲山の水源から南東に流れ出て利根川へ合流していきます。水源の近くや、支流の相間川(あいまがわ)には、渓流トレッキングが楽しめる美しい水辺や滝もあります。
今回は、誰もが気軽な装備でお出かけできる水辺を求め、道の駅から近い「倉渕せせらぎ公園」周辺の水辺に行ってみることに。と、その前に清流の水で冷やしてみたい、採れたて野菜を買っていきましょう。
やっぱり冷やすならトマトでしょう!ということで、真っ赤な「ぐんま麗月」と、鮮やかな黄色が珍しい「桃太郎ゴールド」をチョイス。旬の果物の桃(安い!)と、小ぶりでかわいい「はつまる」という梨も購入しました。地元農家さん直送の珍しい品種の農産物たちに出会えるのも、道の駅ならではの楽しみですね。
せせらぎ公園近くの河原へ
高崎市倉渕町岩氷19-1
豊かな自然の中にある倉渕せせらぎ公園は、斜面を活かした県内最大級・全長約94mのループ式ローラースライダーなどの様々な遊具や、ピクニックができる芝生広場が広がっています。公園に隣接した河原は比較的流れが穏やかで、川遊びを目的に訪れる人も多いです。
※川はせせらぎ公園の区域外です。河川敷の利用にあたっては河川の自由使用の範囲内できれいに使ってください。また水に近づく場合は安全に十分注意してください。
木陰もやっぱり暑いけど、都会のアスファルトの熱気とは違う心地よさがあります。川の水温はどうだろうと、川面のほうに降りていくと一段下るごとに空気がひんやりしてきて、流れの上を吹く風も清々しくエアコンいらずな涼しさです。
ここは烏川の支流・相間川で、水温を測ってみると22度。川に足を浸けてみましたが、ずっと入っているには少し冷たいくらいでした。川底は岩や石がごろごろとしているので裸足は危険。ストラップのあるサンダルや、足全体を保護してくれるようなマリンシューズを履いて入るのがオススメです。
お孫さんと一緒に川遊びを楽しんでいた女性は、渋川市からお越しでした。昔に比べ、どこの川も護岸工事がしっかり行われる反面、遊べるような水辺は少なくなっているそう。川遊びができる場所を調べて、倉渕までやってきたそうです。「川に入ったら、自分が子ども頃にどんな風に遊んだか思い出してきて、童心に帰って私も一生懸命遊んじゃいました。」と、楽しそうでした。
「水は何度だったんですか?」と写真の親子のお父さんから聞かれ、「22度でした!」と答えると嬉しそうに吊り橋の先へ進んでいきました。浮き輪を使うほど深いのでしょうか?吊り橋に登って向こう側を見に行ってみることにします。
泉ヶ渕(せんがふち)
かなり傾斜のある吊り橋をゆらゆら進み見渡すと、滝の絶景がありました!10mの落差で流れ込む水が時をかけて岩を削り、深い渕が天然のプールのようになっています。清らかな深緑の川にキラキラと降り注ぐ太陽の光。ぷかぷか漂うのが何とも気持ちよさそうです。
川で冷えた体は、隣接の日帰り温泉・せせらぎの湯で温めて帰るのもオススメです。
渓流グルメをはまゆう山荘で
高崎市倉渕町川浦27-80
ランチ営業時間 11:30-13:30
県道長野原倉渕線で北西へ進み、渓谷ドライブを楽しむと烏川の源流へと近づきます。まずは、はまゆう山荘でランチにしましょう。ヨーロッパの別荘を思わせる佇まいの建物は、幕末の偉人・小栗上野介が結んだ縁で倉渕と友好都市だった神奈川県横須賀市により昭和62年に建てられました。倉渕と横須賀の人々の交流の拠点や、近隣の市民の宿泊やレジャーの施設として長年親しまれてきた場所です。
石と木それぞれの素材の魅力が引き出された空間は、第29回建築業協会賞も受賞。重厚なロビーでは、ジャズコンサートが行われたり、冬は天然のモミの木でクリスマスツリーが飾られたりと、季節ごとに森に囲まれた癒しの時間が過ごせます。そして、宿泊だけでなく日帰り入浴もできて、レストランでは渓流グルメをランチで楽しめます。
倉渕で育った三種の渓流魚(ギンヒカリ、赤鱒、イワナ)と、地元野菜の天ぷらが森のようにこんもりと天丼になった豪華な一品です。淡白でクセのない川魚でも、イワナのふわふわほろりとした食感、ギンヒカリのなめらかな旨み、赤鱒のしっかりした身の味わいと、それぞれ違うおいしさを食べ比べできる楽しいランチとなりました。
〈国登録有形文化財〉烏川上流砂防堰堤
高崎市倉渕町川浦
はまゆう山荘の入り口のすぐ手前で左に入り、森の中を進むと現れるのが、大きな土木建造物「烏川上流砂防堰堤(えんてい)」です。
烏川の上流部に昭和26年(1951)に建設されたコンクリート造の砂防堰堤です。明治や昭和初期の水害で甚大な被害がでた烏川流域を守るため、築造されました。堰長は67メートル、堤高は18メートルと大規模な越流式堰堤で、現在の法令だとダムに相当する大きさとのこと。1年で完成させなければならないという難工事で、高度な積み石技術をはじめ多数の先端技術が詰め込まれた一大プロジェクトでした。2006年に国の登録有形文化財となり、70年にわたり烏川の防災の要の役割を担っている現役の歴史的建造物です。
堤の上や下に穏やかな水辺があるのですが、現在は水辺まで向かう自然道が大雨で崩れてしまい、立ち入ることができません。ただ、そびえる堤を横から眺められる広場には入れるので、迫力の水音や風が運ぶミストで涼しさを感じられます。
訪れた日は穏やかでしたが、時には大雨を受け止めて恐ろしいほどの轟音と激流になることがあります。自然の力の大きさと、治山治水事業のありがたさを体感できる場所でした。
中野農場の採れたてとうもろこしを炭火焼きで
9月中旬ごろまで毎日 9:00-17:00
※売り切れ次第終了
烏川の最上流から下り、旬の味覚でおやつタイムといきましょう。来た道を戻り(途中で鹿に出会いました!)、明神橋を渡って国道406号を北上すると、トラックの荷台いっぱいに皮付きとうもろこしが積まれた中野農場の直売所が現れます。
毎夏7/20前後から9月中旬までの期間限定で、採れたてのとうもろこしを毎日直売しています。さらに、炭火の香ばしさがたまらない焼きとうもろこしもその場で味わえるんです。
生のとうもろこしを炭火でじっくり焼くことで、ほどよく水分が飛び、粒ひとつひとつに甘味と旨みが凝縮されたプリシャキ食感が味わえます!特製醤油ダレとのコンビネーションと、鼻から抜ける香ばしさも最高です。
とうもろこしのほかにも旬の野菜やお花も並びます。採れたてのミョウガが畑から届いたばかりで、これから井戸水で洗って店頭に並ぶところでした。
せせらぎ公園に戻り憧れの清流チェアリング
最初のせせらぎ公園そばの河原に戻り午後3時近く。この時間になると、お子さん連れの川遊びの人たちの数は減っていました。清流チェアリングのチャンスかも、と午前中の場所より少し下流の、比較的平らで流れの穏やかな川べりにアウトドアチェアを置いて、川床で夕涼み。
猛暑の日差しを受けた水温は、すこし上がって24度。心地よく足を冷やしてくれました。川のせせらぎの音や蝉の鳴き声に包まれて、ただ目の前の流れをみて、風を感じて、ぼーっとするような集中するような、不思議な癒しの時間を過ごせました。
周囲の様子と安全に配慮して、こんな川の楽しみ方もいかがでしょうか。
ひんやりと涼んで川から上がり、飲んだホットコーヒーのおいしいことといったら!日常からちょっと足を伸ばせばすぐそこにある、清流の恵みを存分に楽しんだ1日となりました。
最後にせせらぎの水音がさらに心地よい取材ムービーもお届けします。行った気分で楽しんでもらえたら嬉しいです。
※水辺に近づくときは、天候や水量をチェックして安全に十分配慮してからお過ごしください。